大坂なおみ選手の記者会見 – 濱田記者の質問は確かにわかりにくいが、通訳の仕方にも問題あると思う

語学

大坂なおみ選手の記者会見において、記者が人種差別問題に関連付けようとした質問をしたが、司会が質問を途中で切って交わしたというニュースを以前拝読していました。

しかし、今更ながら報道の動画をみてみたところ、この記者が人種差別を煽ろうとした印象は特に受けませんでした。

大坂なおみ選手のパーソナリティとして、父親はハイチ系アメリカ人、母親は日本人。国籍は日本ですが、アメリカで育っており、日本語はあまり話せない(現在勉強中)という方みたいです。

動画の25分10秒からが話題になっている箇所。

間違いなく記者の質問の仕方は下手です。非常にわかりにくい質問であるのは確かですが、これを『「大坂さん、あなた何人ですか?」と記者が質問した』と拡散するのはさすがに印象操作といえるのではないでしょうか。

少しやりとりをまとめてみます。

大坂なおみ選手記者会見でのやり取り

【記者】
海外の報道などで、大坂さんの活躍や存在が、古い日本人像を見直したり考え直したりするきっかけになっているという報道があると思う。ご自身のアイデンティティも含めて、その辺をどのように受け止めているか?

【通訳】
Foreign media,  they’re saying that your performance and victories remind us of old-style Japanese. How do you think of those comments or what do you think of your own identity
※私訳:「あなたの成績や勝利が、古い日本人像を思い起こさせる」と海外の報道では伝えている。こういった指摘についてどう思いますか。あなた自身のアイデンティティをどう考えますか?

最初のやりとりがコレですが、通訳が訳した赤字箇所で誤解が生じたように思えます。

確かに記者の質問は極めてわかりにくいのですが、プロの通訳者なら真意を聞き直すべきだったと思いますね…。パーソナリティに絡むセンシティブな話題ですから。

記者が”古い日本人像”という独自ワードを使っている為、日本語のネイティブでも記者の真意がよくわからないわけです。古い日本人像というワードで何を言いたいのかよくわからないまま翻訳されてしまいました。

当然誤解が生じて、以下のようなやりとりが行われています。

【大坂選手 (to 通訳)】
Wait, me? I’m old-style Japanese?
※え、私が古いスタイルの日本人ってこと?

【通訳 (to 大坂選手)】
No, well, you remind everyone of the old Japanese-style of —
※いえ、古い日本人スタイルなのは、あなたの…

【大坂選手 (to 通訳)】
Tennis?
※テニス? ( = テニススタイルが古い日本人スタイルだってこと??)

【通訳 ( to 大坂選手)】
I haven’t really seen the article
※正直私はその記事を見ていないので…

【大坂選手 (to 記者)】
Wait, tennis?
※え、テニスのこと?

【通訳 (to 記者)】
ごめんなさい、その報道はテニスに関してそういう風に報道されているのでしょうか?

マイクが使用されていないので若干聞き取りにくいのですが、このようなやりとりがなされているはず。

大坂選手は「テニススタイルが古い日本人スタイルだと報道されてたの?」と誤解しています。

これに対して記者。

【記者】
テニスというよりも、いわゆる古い日本人像っていうものが、日本人の間に生まれた人が日本人っていうような古い価値観があると思うんですけれども、大坂選手の活躍で、大坂選手のバックグラウンドなどが報道される中で、そういった価値観などが少し変わろうという動きが出ていると思うんですけれど。

正直、これも聞きたいことが少しわかりにくいわけですけど…

質問したかったのはテニスではなくてパーソナリティの話だとわかるわけですね。この記者は「日本人の間に生まれた人が日本人っていうような古い価値観」って言っているので、むしろ大坂さんは日本人であると普通に受け入れているタイプの人だと感じます。まとめニュース等で言われているのとは真逆の印象。

「大坂さんはアメリカにずっと住んでいるのに、日本人といえるの?」と騒いでいる日本人たちを、”古い日本人像”と呼んでいたんでしょうね。

ただ、表現に配慮しすぎている為か、やはり言いたいことは抽象的すぎてわかりにくいですね。

ここで通訳と大坂さんのやりとり。

【通訳】
XXXXX(何言ってるか聞き取れない)  reminds us of an old value of an old Japanese virtue
※XXXXは、古い日本人感の価値観を思い起こさせる

【大坂選手】
Like…
※というのは…

【通訳】
In your tennis, actually
※あなたのテニスにおいてです

【大坂選手】
Ok….is that a question?
和訳:OK、それって質問ですか?

通訳が記者の質問を訳していませんね。通訳自身意味がよくわかっていないのか、それとも意図的に訳さなかったのかはよくわかりませんが。

大坂選手は「大坂選手のテニススタイルが、古い日本人の価値観を想起させる」と言われた思い、「それって質問ですか?」と大坂選手が聞いているように見えます。

純粋に、何聞きたいのかよくわからないのでしょう。

【通訳】(to 大坂選手)
He wants to know how you feel about that and how you think of your own identity as Japanese
※それをどう思うのか、又、日本人としての自分のアイデンティティについてどう考えているかという質問です

【大坂選手】(to 記者)
Firstly, ありがとうございます。And then, I mean, I don’t really think too much about my identity or whatever. For me, I’m just me. And I know that the way that I was brought up. I don’t know, people tell me I act kind of Japanese so I guess there’s that. But other than that, if you were talking about tennis I think my tennis is very–not very Japanese.
※まず、”ありがとうございます”。私は自分のアイデンティティなどについてはあまり深く考えていません。私にとって、私は私ですし、自分がどう育ってきたかのかは私が分かっています。自分ではわからないのですが、私の振る舞いが日本人のようだという人もいるので、そのような所もあるかもしれません。しかし、そういった話ではなく、もしテニスについての話をしていらっしゃるのなら、あまり日本のスタイルらしくないと私は思います

【通訳】
まず、私はあまり自分のアイデンティティに関しては特に深く考えることがなく、私は私である、という風にしか思っていないところが多いので・・・ あるいは、私が育てられてきた、その方法の通りに私はなってきているなと思っています。また、自分のテニスに関しては、あまり・・・というかほとんど、日本のスタイルらしくないという風に思っています。

大坂選手が”I don’t really think too much about my identity or whatever. For me, I’m just me.”(自分のアイデンティティとかはあまりちゃんと考えてないけど、私にとって、私はわたしです)と発言したので、これが記者の質問に対する回答になっていますね。

ただ、以前として誤解のあるままなので、テニススタイルの話もしてます笑

 

総じて言えば、

  • 記者の質問の仕方が下手なのは間違いない。ただし、大坂選手に対してそれなりに配慮のある言い回しはしている(そのせいで抽象的すぎる表現になり、何言いたいのかわけわからなくなってはいる)
  • 通訳は、記者の質問の意図を理解しないまま翻訳しているように見える。大坂選手も質問がよくわかっておらず、終始困惑した表情をみせている。

という印象。話題がセンシティブなものであることは間違いないので、記者もこの話題を質問したいのであれば、大坂さんが答えやすいようにもっとわかりやすく質問ができるよう準備すべきだったでしょう。そして通訳も、ちゃんと記者と質疑応答をして、真意を伝えるよう翻訳すべきだったでしょう。

この記者会見において”この人種の話題”がタブーだったのか否かは私にはよくわかりませんが、他の記者も人種の質問をしている人はいますね。この記者、正直そこまで総叩きにされる程の質問をしているかな…と正直疑問に思います。

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Posted by ころな