インデックスファンド批判に関する話題:コーポレートガバナンスの機能
まずはじめに、私の投資スタイルは以下です。
- 海外への投資はインデックス運用がメイン(一部、個別株)
- 日本への投資はアクティブ運用がメイン
インデックスファンドは優秀な商品だと思っているので全体のポートフォリオに占める割合としてはインデックスが多い。しかしインデックス信奉者ではなく、アクティブも結構買っています。
インデックスファンドに対する批判
そんな自分から見ると、アクティブ派 vs パッシブ派の議論というのは極端な批判や反論が多いなと感じているのですが(そういった方々にとっては、私はどっちつかずの中途半端な人に見えるかもしれませんね…w)、一方で議論する意義のある話題だなと感じているものもあります。
その中でも、「インデックスファンドの台頭で正しいコーポレート・ガバナンスが機能しなくなる」という話題は意義のあるものだろうと思っています。
これは、過去に伊藤レポートでも言及された点であり、確かに的を射ている主張です。
日本市場では機関投資家がパッシブ運用に偏っており、中長期的な投資家層が薄いことが指摘されている。市場全体のインデックス等の運用手法では、投資先企業の選別が行わ
れず、企業と投資家の「協創」や「対話」促進にはつながらない。中長期的な視点から主
体的判断と分析に基づいて株式銘柄を選択する投資家層を厚くする機運を醸成すべきであ
る。その際には、アクティブ運用など個別企業の企業価値を評価することが基本であるが、株式の流動性も考慮しつつ一定の企業価値基準で選別したインデックスを主体的に選択することも一つの方向性として考えられる。また、パッシブ運用に偏った状況では企業分析のプロとしてのセルサイド・アナリストの機能が十分に使いきれないことにも注意すべきである。また、投資家の短期志向化も、アナリストの深い分析力に対する需要を減退させている面がある。単純なパッシブ運用偏重ではなく、企業に対する中長期的な投資を促進するためにも、アナリストによるベーシックレポート作成が推奨され、目標株価とその根拠も含むファンダメンタルズ分析が促されることが求められる
『伊藤レポート 最終報告書 要旨』より抜粋
ちなみに、、、脱線しますが「伊藤レポート」は発表当時かなり話題になりまして、海外の人ですら内容を把握しています。日本の現状について色々と論じられていますので、日本の投資家で伊藤レポートを把握していない方には一読を勧めます(無論、内容に賛同するか否かについてはまた別の話)。特に、レポートに掲載されている調査データについては目を通す価値があります。
インデックスファンドの横行は議決権によるガバナンスを形骸化させる可能性がある
話を戻します。
確かに、事実として世界的にインデックス運用の比率は高まっています。しかし、インデックスファンドというのは、本当にその企業に投資すべきかという細かい選定は行いません。なぜならインデックスにその銘柄が組み入れられているというだけの理由で買っているためですね。
アクティブファンドであれば、企業の経営陣が気に食わなければ株を売ればよい(乃至、比率を減らせばよい)わけです。経営者の方針に賛同できるからこそ、その会社の株を買うという見方もできるわけです。
しかし、インデックスファンドの場合は売ることができません。前述の通り、自らが選考していないためです。好感していない銘柄も保有し続けます。
これでは、議決権の機能が希薄化し、企業のコーポレートガバナンスに悪影響があるのではないかと株主が心配するのも最もなことです。
「経営陣が気に入らないなら売れ」から「経営陣が気に入らないなら変えろ」へ
こういった中、VanguardやBlackrockといった運用大手は、自分たちの考え方を経営者に物申すということを表明しています。
アクティブ運用の鉄則が「気に入らないなら売れ」という考え方なら、インデックス運用は「気に入らないなら変えろ」という方針ですね。
インデックスファンドも"物言う株主"になってきたわけです。もちろん、海外の大手アクティブファンドなんかは昔からガンガン物言っているわけですけどね笑
そもそもインデックスファンドは物言うべきかという話も
この方向性というのはガバナンスとしては良い方向性だと思いますが、そもそもインデックスファンドは物言う株主になるべきなのかという話もあるでしょう。
インデックスファンドというのはコストがかからないのが良いわけです。それなのに議決権行使のためにコストをかけて企業調査を行ったり、数値指標を導出するわけで、その小手先の調査にどれだけの意味があるのかという意見も理解できる。インデックス運用の良さを潰す方針であるともいえます。
コーポレートガバナンスという意味では議決権行使会社の影響力も無視できない
コーポレートガバナンスを話題にするなら、近年はISSやGlass Lewisといった議決権行使についての助言を行う会社の存在も無視できなくなってきましたね。近年の株主総会を見ていればわかりますが、外国人投資家の比率が高い会社については、彼らの影響力がかなり出てきていますよね。
こういった議決権行使助言会社は、株主総会の議題について「賛成」「反対」のどちらかの意見を表明します。機関投資家は彼ら(ISSやGlass Lewis)の意見に従って投票するという仕組みです。
機関投資家自体は、その会社の内情なんて全く把握していない。ISSがYesといっているから、Yesに投票する。ISSがNoといっているから、Noに投票する。こういったイメージですね。
株主としてどこまでプレッシャーをかけていくべきか
近年は日本でもコーポレート・ガバナンスの重要性が説かれ、スチュワードシップコードなんかも話題になったりしているわけですが、経営に絡んでいく話ですからとても難しい(且つ、重要)な点ですね。
果たして、インデックスファンドはインデックスにトラッキングだけしていればそれでよいのか。彼らも株主であり、彼らの議決権保有割合は無視できないレベルなわけです。しかしいちいち個別の企業をみない分、コストがかからないというのがインデックスファンドの良さでもあります。
彼らは株主としてどこまで経営にプレッシャーを与えていくべきなのか。
インデックスファンドに関する批判や議論は色々ありますが、企業価値向上の仕組みに絡む話題ですから、なかなか興味深い話題だなと私は思っています。なかなか難しい問題ですね。
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